【Cosmos DB】有効期限(TTL)で自動削除されるデータを作る
1 概要
Cosmos DBでは「有効期限付きデータ(ドキュメント)」というものを作ることができます。
ログ情報とかユーザーセッション情報とかのデータを ドンドコドンドコ 投入して、一定期間経過したデータは自動で削除するようなケースで利用可能です。
「よくあるファイル転送サービス(一定期間で削除される)」だったり「スナップチャット(的な)有効期限で自動削除されるサービス」だったり、そんなところでも使えるケースがあるかと思います。
ただし、ドキュメントが単独で自動削除される機能であるため、「一連の関連データを削除」というようなケースでは、単純に適用することはできないと思います。
1つ、特徴として「自動削除では RU は発生しない(RUは消費しない)」という点があります。
自前プログラムで、裏側でバッチ削除的なことをする場合、RUを消費するので、上手く使えばメリットのある機能になると思います。
1.1 設定レベル
有効期限の設定は、以下の2つのレベルに対して設定可能です。
- 「コレクション」に対して設定する
- 「ドキュメント」に対して設定する
1.1.1 「コレクション」に対して設定する
「Off / On(no default) / On」の3つの設定から選択します。
(1) Off
Off は、このコレクションにおけるドキュメントの有効期限自動削除を無効にします。ドキュメントに対して明示的に有効期限を設定しても、自動削除機能は働きません。
(2) On(no default)
On(no default) は、このコレクションにおけるドキュメントの有効期限自動削除を有効にします。既定の有効期限時間は設定しません。
有効期限削除を有効にしたいドキュメントに対して、明示的に時間を設定します。
(3) On
On は、このコレクションにおけるドキュメントの有効期限自動削除を有効にします。既定の有効期限時間も設定します。
既定の有効期限は、各ドキュメントでオーバーライドすることが出来ます。
また、有効期限は「秒」単位で設定可能です。
1.1.2 「ドキュメント」に対して設定する
ドキュメントに対して有効期間を設定する場合は、保存するドキュメントオブジェクトに対してJSONプロパティ名=「ttl」というint?型プロパティを追加します。
[JsonProperty(PropertyName = "ttl", NullValueHandling = NullValueHandling.Ignore)] public int? TimeToLive { get; set; }
※後述リスト3が完全版オブジェクト実装
1.1.3 「コレクション設定」「ドキュメント設定」の相関関係
コレクションに対する設定とドキュメントに対する設定の相関関係を表にまとめると以下の通りです。
コレクション設定 = Off | コレクション設定 = On(no default) | コレクション設定 = On(既定値 n秒) | |
---|---|---|---|
ドキュメント設定 = なし | 有効期限削除は無効(削除されません) | 有効期限削除は無効(削除されません) | 最終更新日時からn秒後に削除されます |
ドキュメント設定 = -1 | 有効期限削除は無効(削除されません) | 有効期限削除は無効(削除されません) | 有効期限削除は無効(削除されません) |
ドキュメント設定 = m | 有効期限削除は無効(削除されません) | 最終更新日時からm秒後に削除されます | 最終更新日時からm秒後に削除されます |
※「ドキュメント設定 = xx」と記述しましたが、コード上では int? 型として有効期限(TTL)を指定する事ができます。
1.2 削除タイミング
削除のタイミングは以下となります。
ドキュメントが最終更新されてから、 有効期限として設定された時間(秒)が経過したタイミング
「最終更新日時(Last modified timestamp)」からの経過時間で自動削除判定が行われます。
「最終参照日時」ではないので、単純に ”一定期間利用されていないデータを削除する” といった用途には適用できないのでご注意を。
1.2.1 最終更新日時(Last modified timestamp)とは
最終更新日時(Last modified timestamp)とは、具体的には以下のものを指します。
ドキュメントの「_ts」値
_ts値は、ドキュメントに対してCosmos DBシステムによって設定される値です。
ドキュメントの最終更新日時を表し、ドキュメントの作成時・ドキュメントの更新時に自動的に更新されます。
値は、「UNIX時間」であらわされます。
Azureポータルのデータエクスプローラでドキュメントを参照すると、以下のように _ts 値を確認することができます。
Fiddlerでドキュメント取得を行うRESTリクエストをキャプチャしても、以下のように _ts 値を確認することができます。
2 実装(コード)
では具体的な実装(コード)で「ドキュメントの有効期限設定」を行う方法を説明します。
2.1 コレクションに対して有効期限を設定する
まず「コレクションに対して」有効期限を設定する方法になります。
// リスト1 コレクションに対してドキュメントの有効期限を設定 private DocumentClient client = new DocumentClient( new Uri("https://cosmosdb.documents.azure.com:443/"), // あなたのURLを設定してね "【キー】"); // あなたのキーを設定してね var database = await client.CreateDatabaseIfNotExistsAsync( new Database() { Id = "ExampleDb" }); var collection = await client.CreateDocumentCollectionIfNotExistsAsync( UriFactory.CreateDatabaseUri("ExampleDb"), new DocumentCollection() { Id = "ExampleCollection", DefaultTimeToLive = 60 });
上記リスト1はデータベース(ExampleDb)とコレクション(ExampleCollection)を「(存在しなければ)新規作成」するロジックとなります。
そして、「DefaultTimeToLive = 60」の部分が「コレクションに対する、ドキュメント有効期限設定」になります。
つまり、最終更新日時から60秒でドキュメントが自動削除される設定となります。
「未設定 もしくは null」を設定すると、「Off」となります。
DefaultTimeToLive = null
「-1」を設定すると、「On(no default)」となります。
DefaultTimeToLive = -1
2.1.1 DocumentCollection.DefaultTimeToLive と 「Off / On(no default) / On」設定
コレクションに対する有効期限設定(DocumentCollection.DefaultTimeToLive)と「Off / On(no default) / On」の概念的設定の関連性は以下の通りとなります。
DocumentCollection.DefaultTimeToLive = n
「On(no default)」に該当します。
ドキュメントは、最終更新日時のn秒後に自動削除されます。DocumentCollection.DefaultTimeToLive = null
「Off」に該当します。DocumentCollection.DefaultTimeToLive = -1
「On(no default)」に該当します。
ドキュメントの自動削除は有効ですが、自動削除時間はドキュメントの設定に依存します。
2.2 ドキュメントに対して有効期限を設定する
「個々のドキュメントに対して」有効期限を設定する例が以下のリスト2になります。
// リスト2 自動削除までの時間=100秒のドキュメントを作成 // コレクションに保存するオブジェクトを作成 UserAccount userAccount = new UserAccount() { UserID = "ryuichi111std", UserName = "Ryuichi Daigo", UpdateCount = 0, TimeToLive=100 }; // オブジェクトをコレクションに保存(ドキュメントとして保存) var document = await client.CreateDocumentAsync( UriFactory.CreateDocumentCollectionUri("ExampleDb", "ExampleCollection"), userAccount);
Cosmos DB(DocumentDB)に保存するデータ型「UserAccount」が唐突に登場していますが、これは以下のリスト3の型となります。
「TimeToLiveプロパティ」値が有効期限(TTL)となります(ドキュメントの有効期限は100秒)。
リスト3にあるように「jsonプロパティ名 = ttl」とします。これがドキュメントの有効期限を示すプロパティとなります。
// リスト3 保存するドキュメントの型はこれ using System; using Newtonsoft.Json; namespace AutoExpireDataExample { public class UserAccount { [JsonProperty(PropertyName = "id")] public string UserID { get; set; } public string UserName { get; set; } public int UpdateCount { get; set; } [JsonProperty(PropertyName = "ttl", NullValueHandling = NullValueHandling.Ignore)] public int? TimeToLive { get; set; } } }
3 まとめ
ということで「有効期限で自動削除されるデータ(ドキュメント)」についてのエントリーでした。
ドキュメントの削除処理に関したは「単に特定コレクションドキュメントが単独で消えていい例」それから「プログラマティックに関連データも同時にカスタム実行により削除したい例」とあると思います。
その上で、RU消費のない「ドキュメントの有効期限自動削除」は魅力的な機能でもあります。
使いどころの難しさはありますが、うまく活用すれば有益な機能の1つであると思います。